※当記事は2017年に執筆したものであり、現在の改正労働基準法に則ったものではありません。
違法残業裁判が話題となっています。
昨日、違法時間外労働の初公判が行われたからのようです。
まさか、あの、トップ企業が!?違法残業で送検されるなんて!?
昭和を知っている人たちにとって、こんな日が来るなんて想像できなかったのではないでしょうか。
ニュースを見ていると「こんなに世間を動かすことができたあの母親は何者なのだろうか」などと余計なことを考えたりして・・・
ところで、残業と呼ばれるものに「違法なもの」があることを、私は知りませんでした。
違法な残業とは、時間で決まっているの?
それとも違法残業は残業代が払われていないとか?
いろいろ疑問はつきません。そこで、疑問点を調べてみました。
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残業は、法律的には「時間外労働」と呼ぶようです。
その時間外労働とは、決められた契約時間(所定労働時間と呼ばれています)を超えて働くことを言います。
例えば1日3時間の勤務で契約しているパートさんが、臨時で4時間になった場合、臨時で働いた1時間が時間外労働になります。
一般的な会社員なら7時間30分から8時間が所定労働時間となっていることが多いので、そのあとに働いた時間が時間外労働=残業です。
お給料明細を確認したら、ちゃんと時間外労働をした時間分だけ残業代が払われています。これは違法残業じゃないよね?
実は、残業代が払われていることと残業が違法かどうかは別問題なのだそう。
会社は労働者に残業をさせるには、次のことが必要になります。
会社は、上記3点をキチンとしなければなりません。
残業代が支払われていても、2がなければ違法残業となる可能性が大です。
※上記は違法性を保証したものではありません。また全ての労働体系に当てはまるものではありません。違法かどうかは該当機関に相談してください。
ここで問題です。
変形労働時間制を採用していない会社と仮定します
上の1〜3で、36協定が必要な残業は何番でしょうか?
答えは・・・②と③です。
それでは理由を確認してみましょう。
労働基準法という、会社が労働者を使ってお仕事をしてもらう時に守る法律があります。
その労働基準法の第32条では、労働時間が決められています。
第32条(労働時間)
- 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
- 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。
引用元:厚生労働省HP
法律では、原則として1週40時間、1日8時間を超えて働かせちゃダメだよと決まっているようです。
「あれ?でも、みんな残業しているよ?法律違反なの?」
それは、労働基準法には続きがあるからです。
第36条(時間外及び休日の労働)
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、1日について2時間を超えてはならない。
引用元:厚生労働省HP
この労働基準法 第36条に書かれていることを実行すると、長時間の残業をさせることができることから、第36条の数字をとって「36(サブロク・サンロク)協定」と呼ばれているようです。
これには特定の業種や業務を除いて、上限の基準が決められているようです。
これは労働省告示の「労働時間の延長の限度に関する基準」に定められています。
今現在は、次のとおりとなっています。
期間 | 上限時間 | |
A | 1週間 | 15時間 |
2週間 | 27時間 | |
4週間 | 43時間 | |
1箇月 | 45時間 | |
2箇月 | 81時間 | |
3箇月 | 120時間 | |
B | 1年間 | 360時間 |
※今回は変形労働時間制を採用していない会社と仮定しています
協定を結ぶ時に注意する上限の時間は、Aの中から一つ選んだ期間とBの1年間について、表の時間内におさめる必要があるということです。
Aの期間のうちどの期間を選ぶのかは、決まりはないようです。
想像では、通常のオフィスならお給料計算の期間に合わせて1ヶ月で結び、四半期ごとに予算を見るような開発職などでは3ヶ月になるとか、そんな感じでしょうか。
あれ?1ヶ月45時間以上の残業をしているよ?これってダメだったのね!?
この上限時間には、抜け穴があったのです。
労働時間の延長の限度に関する基準
(一定期間についての延長時間の限度)
第3条
労使当事者は、時間外労働協定において一定期間についての延長時間を定めるに当たっては、当該一定期間についての延長時間は、別表第一の上欄に掲げる期間の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる限度時間を超えないものとしなければならない。ただし、あらかじめ、限度時間以内の時間の一定期間についての延長時間を定め、かつ、限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない特別の事情(臨時的なものに限る。)が生じたときに限り、一定期間についての延長時間を定めた当該一定期間ごとに、労使当事者間において定める手続を経て、限度時間を超える一定の時間まで労働時間を延長することができる旨及び限度時間を超える時間の労働に係る割増賃金の率を定める場合は、この限りでない。引用元:厚生労働省HP
これによると、特別な繁忙期などを対象にして、前もって労使協定の中で「繁忙期は○時間」と別の上限を決めておけば残業させられるよとなっています。
通称で「特別条項」と呼ばれているようです。
なるほど〜。
これが今の法律で「残業時間は青天井」と報道されている部分なんですね。
そして、この特別条項に新たに制限を設けようとしているのが、いま政府が進めている「働き方改革」の一つとなっているようです。
働き盛りの夫をもつ主婦として、また来春から新社会人として働き始める娘をもつ母として、この働き方改革が早期に実現することを応援します。
まだ裁判中ということもあり、正式な文書をネットで見つけることができませんでした。
そこで報道されている内容をつなげて考えてみます。
今回の会社は36協定はキチンと結んでいたようです。
労働基準法は、36協定を結んで労働基準監督署に出していれば、第32条で決められた労働時間(一週40時間・一日8時間)を協定の中で決めた時間まで働かせても違法じゃないよとなっています。
今回報道されている企業は、この「協定で定めた時間」をさらに超えて働かせていたようです。
また悪いことに、何度か当局から指導を受けていたようですが、その後は「協定で定めた時間」を超える時間を残業として認めない「サービス残業」としていたとも報じられています。
これが労働基準法の第32条に違反していたということですね。
法律には使用者の監督責任などがあるので、この違反以外にも裁判で問われているのかもしれませんが、違法行為の中心は労働時間の法律違反なのではないでしょうか。
今回の違法残業裁判は歴史的にみても重要なものとなると思います。
大切な娘さんを亡くした女性がきっかけとなり始まった裁判は、未来に向けて多くの母娘を助けることになるものと思います。
判決が出るまで報道から目が離せません。
違法残業とは
実は今回調べていて気になったのは、報道されている別の企業は「休日労働」に違反していると書かれているものがありました。
その会社も36協定を結んでいたようなので、まだまだ奥深い問題のようです。
今後もリサーチし、次の機会にお伝えできればと思います。